鍼(はり)治療とは

 鍼といっても種類は様々ですが、現在私達が一般に使用する鍼は毫鍼(ごうしん)と言われるものです。

 主に経穴(ツボ)にあたる部位に対し治療を施し、症状の改善に効果をあげます。

 鍼を刺すと言うと「痛い、恐い」というイメージがあるかもしれませんが、治療に用いる鍼は一般的には毛髪ほどの太さのものを使用し、

 習熟した技術によって刺鍼するため、ほとんど痛みはありません。

 また当施設では主にディスポーザブル(使い捨て)の鍼を使用し、器具・手指の消毒など衛生面にも十分な配慮を払っています。


灸(きゅう)治療とは

 灸はヨモギを乾燥させた葉をつきつぶして得られたモグサというものをひねり、穴(ツボ)の上などで燃やすものです。

 灸には皮膚にもぐさを直接据えるものから、ニンニクや生姜などの上から据えるものまで、多くの種類があります。

 灸もやはり「熱い」というイメージがあるかもしれませんが、直接皮膚に据えるものでも一般的には半米粒大くらいの大きさのため、

 瞬間的な熱感で心地よさを感じることも多くあります。

 また、皮膚に直接据えない灸は、心地良い温熱刺激が得られます。東洋医学では冷えを病のひとつの原因と考えており、

 現代の生活で冷えがちな体(体内)を温め、様々な症状の緩和に効果をもたらします。



鍼灸の適応症
 
 当院では下記のような症状や疾患の方が治療を受けられておられます。

神経系疾患 脳梗塞後遺症 半身不随 言語障害 顔面神経麻痺 三叉神経痛 腰痛

坐骨神経痛 腕神経痛 肩こり 神経性頭痛 偏頭痛 後頭神経痛 むち打ち

寝ちがい 肋間神経痛 神経炎 めまい 乗り物酔い
運動器系疾患 五十肩 各種腱鞘炎 弾発指 各種スポーツ障害 膝痛 股関節痛 関節炎

関節リウマチ 筋肉リウマチ
婦人科系疾患 更年期障害 子宮内膜症 子宮筋腫 冷え症 不妊症 生理痛 生理不順

月経困難症 月経過多 無月経症 妊娠腎

不妊症 さかご(逆子、骨盤位) 妊娠時のつわり(妊娠悪阻)
消化器系疾患 慢性胃炎 急性胃炎 胃、十二指腸潰瘍 胃痙攣 胃酸過多 食欲不振

便秘 下痢 痔 大腸炎 潰瘍性大腸炎 口内炎 消化不良 肝機能障害
腎・泌尿器系疾患 腎炎 尿道炎 慢性膀胱炎 前立腺肥大 
内分泌系疾患 貧血 バセドウ病 糖尿病 自律神経失調症 膠原病 リウマチ
小児科系疾患 夜尿症 夜泣き かんむし 小児マヒ 小児喘息 消化不良 慢性中耳炎 アトピー性皮膚炎

(小児用はりを使用します。はりを刺すわけではありません。小児用はりで、皮膚に刺激をあたえます。)
呼吸器系疾患 感冒 咳 痰 気管支炎 気管支喘息
眼・耳鼻科系疾患 白内障 緑内障 眼瞼下垂 仮性近視 ドライアイ 眼精疲労 

網膜症 難聴 耳鳴り メニエール症候群 アレルギー性鼻炎 扁桃炎 歯痛
外科系疾患 しもやけ 打撲 捻挫
その他 難病 がんの化学療法に伴う吐き気 疲労 倦怠感 円形脱毛症 各種慢性病 肥満症

脳卒中後遺症 頭痛 高血圧症 風邪 糖尿病 

鍼灸の歴史

 古代中国医学が実際に体系づけられたのは、春秋戦国時代の末期(B.C.320〜B.C.250)であり、

 ついで秦・漢の頃になって完成されたものと推定される。この様に中国で発達した鍼灸施術が、わが国に伝来したのは、

 西暦562年(大和時代)と伝えられる。以来、日本・中国で脈々と伝統は受け継がれ、戦後になり諸先輩方により多くの研究がされ、

 最近では1971年中国における鍼麻酔の発表以来、1977年エンドルフィン、エンケファリンという脳内モルヒネ様物質が発見され、

 鍼刺激とこれら脳内モルヒネ様物質との関係及び鍼灸刺激と中枢神経との関わりについて研究が進められ、

 今や副作用のない安全な医療として世界的な認知を得ています。

鍼灸施術の意義

 伝統的な鍼灸施術は、陰陽五行、臓腑経絡を対象として疾病を診断し、虚証・実証に応じて、補・瀉の手法を用い、気、血の循環をただし、

 全身の機能を調節し、自然治癒力、免疫力を増強することにより病気を治そうとするところにあります。よって腰痛、頚、肩の痛み、

 スポーツ障害等の筋骨格系の症状に限らず神経的、内科的な様々な疾患にも対応できるのです。

健康と疾病との可逆性

 東洋医学の古典には、「上工は未病を治し、下工は病を治す」(工は医の意)という言葉がある。

 健康が傾斜してくると、第一に感覚異常、次に機能異常が起き、伝染やストレスの危険にさらされ、最後に器質変化に及ぶ。

 回復する場合にも、この順序をたどる。現代医学は器質変化を主目標とし、最近は機能検査が進歩しているが、感覚の異常については無関心である。



●「未病治(みびょうち)」

 「東洋医学における病気の原因に対する考え方

 東洋医学では病気の根本的な原因を大きく2つに分けて考えています。まず人間を取り巻く物理的な環境を取り上げています。

 具体的には「寒、熱、風、署、燥、湿」の6つに分類されます。つまり熱、冷え(寒)、湿気、乾燥、風といった環境が原因になると考えています。

 次に人間の精神、情緒を取り上げています。具体的には「喜、怒、憂、思、悲、恐、驚」の7つに分類しています。

 これらの情動が大きく変動する、あるいは偏り続けると、体内の「気」の働きに変調を来し、経絡や臓腑(東洋医学でいう内臓)に異常が起こります。

 これを東洋医学では「気が病む」、つまり「病気」と認識しています。このような異常はさまざまな形で表出してきます。

 症状はもちろんのこと、顔色、舌、腹、脈、情緒などの変化や「気」の出入り口であるツボにも認められます。

 これらは、明らかに現代医学的にも異変と認められる程度はもちろんのこと、現代医学的には取るに足らない微妙な変化をも「気」の変化としてとらえられます。

 「気」の変化は初期段階では軽微な変化にすぎませんが、これが度重なったり継続すると、顕著な症状や所見を現わすようになるのです。


「予防医学こそが求められる最善のもの」

 東洋医学ではこのような「気」の異常を微細なうちから察知し、深く重くならないように対処していくことが、病を治療する上で最も大切であるとしています。

 これを東洋医学では「未病治」、つまり「未だ病にならざるを治す」としいい、最善の治療法としています。

 肩凝りや疲労といった病気とは言い難い、ほとんど日常的な身体の変化にも気の変動が認められ、そのような軽微な状態のうちに治すことが、

 病気を治療する上で最も大切なことであるといえます。予防医学こそが病を治療する最善の方法なのです。


●「証(しょう)」と「四診」

 
病気や様々な症状、兆候は「ちょっと無理があるよ」という身体からの貴重なサインです。

 東洋医学の治療方法はこの貴重なサインを読み取って、患者さん一人ひとりの状態に応じ、身体に本来備わっている癒す力に注目し、

 その力を最大限に引きだせるように治療します。漢方薬だから、鍼灸だから東洋医学というわけではありません。

 同じ病気でも患者さん一人ひとりの違いや体質をきちんと意識して診察・治療しているのが、東洋医学なのです。

 専門的にはこの患者さんそれぞれの状態を「証」といいます。

 この「証」を決めるため診察を行いますが、特徴的なのは四診と呼ばれる独特の方法を使うことです。

 四診(ししん)は望・聞・問・切の四つの診察のことをさします。

 望診(ぼうしん)・・・患者さんの立ち姿や動き、顔色、皮膚など客観的にくみ取れる情報のほか、患者さんのもっている雰囲気や表情、

            生気の有無、人相なども対象となります。舌をみる舌診もこれに含まれます。

 問診(もんしん)・・・現代医学の問診に相当しますが、その内容は東洋医学の概念にそったものとなります。
            
            現代医学では重要視されないような患者さんの自覚的な感覚や主観的な感覚も大切になります。
            
            細かな兆候など病気や主訴に関係ないこともいろいろ聞きますが、患者さんの全体を把握するために、不可欠です。


 聞診(ぶんしん)・・・声のトーンやしゃべり方などで判断します。

 切診(せっしん)・・・脈を診る脈診、お腹を診る腹診、ツボやコリを調べる切経、背中の状態を調べる背候診、などがこれに含まれます。

 
これらの診察法を通して、患者さんの個々の状態を総合的に判断し、かつ経時的にに認識していきます。


当院の安全衛生について

 当院で使用する鍼はエチレンオキサイドガス滅菌処理済みの使い捨て(ディスポーザブル)のステンレス鍼です。

 使用済みの鍼と血液の付着した脱脂綿は、メデイックス株式会社と産業廃棄物処理委託契約を結び、医療廃棄物として、法令により正しく廃棄しています。



鍼灸施術の説明

 初回の施術前に、書面と口頭で施術内容や注意事項、リスクなどを説明しております。その内容を理解し同意書に署名をいただいてから施術に入ります。

(1)施術全般

 当院の施術は自由診療と一部健康保険診療(主治医の同意必要)になります。

 設備、器具、手指、施術箇所等、消毒には万全を期しています。

 施術後、だるくなったり、痛みが増したり、時に他の部位に痛みや違和感が出たりすることがあります。これは一過性のものですから心配ございません。
 
 これを漢方では、瞑眩(めんげん)といってむしろ効果の現れる証拠とされ、身体を修復し、これまでの心身の歪みを改善するための反応で、必要な過程だと考えてご安心ください。

(2)鍼施術


 鍼はエチレンオキサイドガス滅菌処理済の使い捨て(ディスポーザブル)のステンレス鍼を使用しています。

 当院で使用する鍼は、直径0.10〜0.25mmです。人によって、または部位によって痛みを感じることがあります。我慢できないときは、お知らせください。

 鍼が一定の深さに届くと、「鍼の響き」または「得気(とっき)」とよばれる独特の感覚が得られます。

 鍼を抜いたとき、軽い出血がみられることがありますが、適切な止血処置をします。

 皮下出血(アザ)がみられることがありますが、数日で消失しますのでご安心ください。

 当院の鍼施術の特徴として、症状や体調に応じた経穴(ツボ)の組合せによって刺鍼します。必ずしも症状のある部位に刺すわけではございません。

(3)灸施術

 当院で使用する灸は、間接灸で熱を3段階(強・中・弱)に調整できます。それでも熱くて我慢できないときは、低温やけどや水泡になる恐れがありますので、お知らせください。

 また、直接灸も施術しております。(やけど跡が残る場合があります。)

(4)その他

 必ずしも一回の施術で改善されるものではありません。施術の効果については、個人差があり継続的な施術が必要となる場合がございます。

 ご不明な点やご心配なことなどございましたら、お気軽にご質問ください。


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